2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

職業

それ用の台座に座って係員の指示を待つ間、これでも飲んでいて下さい、と渡されたコーヒーがずいぶんと薄く、しかしこんなところでコーヒーの味についてあれやこれや言うのも少し野暮なんじゃないかと思い、黙って啜った。しばらくすると、大きなポリ容器を…

アイ・ラブ・ユー, 雪国

ちょっとね、汽車に乗りたいって思っちゃったわけ。思いついたら即動きたいのが僕ですから。すぐ買った。特急のきっぷをパーッと買っちゃった。すぐに荷物まとめてさ、飛び乗ったの。汽車にね。気分はもうアレだよね、上京。思い出すよねやっぱ。ひとりぼっ…

涼宮ハルヒの雪国

「……ウソだろ、おい」 トンネルを抜けると、そこは雪国だった。 もちろん、今は四季の中で俺がもっとも避けて通りたい、なかったことにできるのならばそれに越したことはない、うららかな春をよりいっそう満喫するためにわざわざマイナス地点からスタートさ…

小耳

ちょっと小耳に挟んだ話なんですがね。これが困ったことに、え、この話、先週小耳に挟んだんですが、この話が小耳にうまい具合に挟まって、取れないんですよ。耳のこの、裏? 奥? や、小耳、ですね。小耳に。うまいことスコーッと挟まって、取れやしない。…

堀へ

「本場のモンゴル相撲を見せてやるッス!」 と言い残しこの町を飛び出した堀よ。勢いに負け盛大に送り出してやった我々ではあったが、堀はモンゴルについても相撲についても全くの無知のはずで、そもそもどこの誰ににその本場のモンゴル相撲を見せつけに行っ…

病室

病室のベッドから自力で起き上がることすらままならない俺に、気休めのつもりか何なのか、妻が持ってきたのは大きなメスゴリラのぬいぐるみ。ぬいぐるみにオスもメスもないが、頭部にピンク色のリボンが縫いつけてあるので、これはメスなのだろう。昔から妻…

崖の上から失礼致します。先日、お話ししました「赤色老人」の続きなのですが、あの話、さらに後日談がありまして。結局、青年は、老人を山に置き去りにして、御妙寺院の婆に言われていた通り、一度も振り返ることなく走り逃げたのですが、山道の途中にあっ…

ふかふか

「ほう、これが」「ああ」「確かに」「ふかふかだろう」「ああ、ふかふかだ。思っていた以上にふかふかだ」「思っていた以上にか」「ああ、すごくふかふかだ。でも、噛むのだろう」「噛むんだ。ちょっと気を抜いた隙にがぶー、さ」「危ないな」「ああ、すご…

爺婆

昔々あるところにお爺さんとお婆さんがおったそうだが今回それはどうでも良い。私は今大変腹立たしい気持ちでいっぱいであり、今日はそのことについて話したい。昨日の昼頃、私はいつも利用している地下鉄に乗り込むとそこにお爺さんとお婆さんがおったそう…

会議

まずはそのそれぞれ配ってある資料を見て頂きたい。まあ資料と言っても、一昨日のスポーツ新聞を引き破いてランダムに配布しただけなので、資料とは言えないが。 さて、今回わたしが提案したテーマ、まあテーマと言っても先程わたしがワープロで適当にキーを…

買います。

あき竹城のブロマイドと お忍びで来日したレニー・クラヴィッツが初めて立ち寄った浅草神社で手を組み合わせ祈っているところに「バッキャロお前、ここじゃこうやっておいのりすンだよお前」と教えてくれた地元の老人と意気投合、そのまま近くの一杯飲み屋で…

買います。

あき竹城のブロマイドと 「今日はひとりでバッカバカ釣ってやる」と意気込み河口湖へ向かった糸井重里が道中立ち寄ったドライブインで若いヤクザ数人に囲まれ、「その釣り竿、俺の竹竿と交換しろ」とスゴまれたり「お前の釣った分の80%は俺等の取り分な」と…

包丁一本

気が付けば、今俺は準決勝のリングの上に居る。 偶然インターネットで見つけた「大会概要」にはこうあった。「素人さんは武器を『ひとつ』だけなら『なんでも』使って良い」 一風変わったバーリトゥード・ルールに勝機を見出した俺はつい勢いで「参加申し込…

永百輔の ビッグ・バッド・人生訓 #1

『なぁおっさん、学校で習う物事に意味はあるのかい? 俺は虚しくてしょうがないよ。もしあの無益としか思えない時間に何某かの意味があるのなら、俺に教えてくれよ。 p.s. 毎号楽しみにしてるぜおっさん! 木更津市 沼小路浩二』 最初にひとつあなたに申し…

ぬらぬら相撲 #1「二十一世紀型」

まったく二十一世紀になったというのに何の実感もないというのはこれ、実に楽しくない。私が子供の頃に脳に描いていた二十一世紀と比して思うにこれはもう、こうして文字などを書いている時点で相当に間違っているのであって、こんなものは脳から脳へ直接伝…

買います。

スガシカオの生写真と 新しい作品づくりのため、最近の若者たちの趣味趣向をリサーチしておくべきだ、と考えた宮崎駿が、ニット帽、サングラス、胸に「SUMMER」とプリントされたトレーナーといった、自分の中で一番「らしくない」と思う格好で渋谷に繰り出し…

買います。

スガシカオの生写真と 「すごくいいものを拾った」と電話をかけてきた田島貴男の家に、慌てて車を飛ばし駆けつけようとした小西康陽が首都高で横転事故。集中治療室に運ばれる担架の上で閃いたメロディが「東京は夜の七時」であった。という内容を小山田圭吾…

昼の顔

男は崖に立っていたただひとつ ウレタン製の巨大なサイコロを抱えて 通常 男はそのサイコロを他人に振らせているのだけれど 今日は自分で振ってみたたったひとりで パステルカラーのそのサイコロにはそれぞれ文字が書かれていて 「なさけない話」「初恋の話…

炊事

冷蔵庫から引き掴んだ肉なのか野菜なのかもうひとつ判然とせん黒い食材を俎板に並べ、無駄に丁寧に研いだ包丁で、捌く。妙な汁が出るが一向に気にせん様子でなんだったら鼻唄なども交えながらこれを微塵に、刻む。傍らでは鉄鍋から地獄の如き煙を放ち油が煮…

あとがき・2

いやあ、参った。参った。君には到底かなわんよう。などと卑屈な笑みを浮かべながら諂うことは私にとってはまったく苦ではなく、現場が丸く収まるのであれば率先してそうやって口元を異様な角度に曲げ、えへぇ。えへぇ。そのとおりで。と媚び倒し、まったく…

あとがき

世の中は本当に便利になった。というのも先日、プラズマテレビジョンなるものを購入したのだけれどもこれが大変調子がよく、巨大な画面に広がるチャンバラ活劇はこれ自分が斬られてしまうのではないかといった迫力で、ひっ。うわぁ。ぬぬぬぬぬぬ。けけけけ…

饅頭の花

県道をただ歩く俺に向け飛び交う町の者らのがんばれ、がんばれという声援がどういう理由によるものなのかは分からないが、手を振り笑顔を振りまく俺。ぐんぐんぐんぐん歩いていると心も弾む。皆が応援してくれているのだ、と思うと心強く、更にペースを早め…