職業

 それ用の台座に座って係員の指示を待つ間、これでも飲んでいて下さい、と渡されたコーヒーがずいぶんと薄く、しかしこんなところでコーヒーの味についてあれやこれや言うのも少し野暮なんじゃないかと思い、黙って啜った。しばらくすると、大きなポリ容器を抱えた係員が三人やってきて、碌に挨拶もしないまま作業にとりかかる。

 上の方から塗っていかないと、足許に溜まってしまいますから、といきなり顔の方から塗られたのには参った。まだ液状のそれは生温く、こそばゆい感じもするが、そんな感覚にもじき慣れた。塗り、乾いてはまた重ねて塗るという単調な作業を繰り返し、二時間も経った頃には私の体はすっかり台座に固定されていて、見た目も、気持ちも、もうだいぶ銅像のそれになってきているのが自分でも分かる。前の仕事を辞める時は、その後まさか自分が銅像をやることになるとは思いもしなかったが、今はただ、何処に運ばれ飾られるのか、それだけが気掛かりだ。