昼の顔

男は崖に立っていた
ただひとつ ウレタン製の巨大なサイコロを抱えて

通常 男はそのサイコロを
他人に振らせているのだけれど

今日は自分で振ってみた
たったひとりで

パステルカラーのそのサイコロには
それぞれ文字が書かれていて

「なさけない話」
「初恋の話」
「あの夏の恐怖体験」
「やっちゃった話」
「今日の当たり目」
「お前なんか、いなくなってしまえばいい」

男は自分の運命に あちゃぁ と一言呟いて
ほんの数秒 空を飛んだ

ごきげんよう