アイ・ラブ・ユー, 雪国

 ちょっとね、汽車に乗りたいって思っちゃったわけ。思いついたら即動きたいのが僕ですから。すぐ買った。特急のきっぷをパーッと買っちゃった。すぐに荷物まとめてさ、飛び乗ったの。汽車にね。気分はもうアレだよね、上京。思い出すよねやっぱ。ひとりぼっちでさ。たまにはいいよねこんな旅も。うん。
 でもさ、パーッと確かめずに買っちゃったもんだからさ。そうそうそうそう、遠いやつ一枚、なんて言って。北だとか南だとか右とか左とかさ、矢沢そういうのどうでもいいわけ。なんでもイイから遠いやつ一枚、それでOK。

 ……アレどのぐらい揺られてたんだろうね。雪。気がついたら。一面。真っ白なの。おどろくよね(笑)。パッと乗って次にパッと顔上げたら、雪国なの。トンネル、スーッと通りすぎたらさ。いや、ビューティフルの一言だったよね。こんな時に出る言葉は。やっぱ旅ってイイよね、って思ったもん。もうその景色一発でさ。最高。全っ部、ホワイト。いや、シルバー? 銀世界っていうの?
 こっちはまさか雪国に行くなんて思っちゃいないもんだからさ、うすーいパリッパリのシャツ一枚でさ。寒いわけ。当たり前だよね(笑)。そしたらさ、向こうっ側に座ってる女性がさ、窓開けて。冷たい風が一気にスーッ、とさ。入ってくるの。おどろいたよね。寒さナメちゃいけねえなって思った。そんで、こんな寒いのに何窓開けてんだろうな、と思ってさ、見てたわけ。女性のほうを、こう、ジッとさ。駅長呼んでた。向こうのほうの。イイ声してたな、あの女性。
 大体そんな時ですよ。メロディーがパッと浮かんでくるのは。寒さとさ、シルバーと、女性? このシチュエーションもらっただけでもう正解だよね。この旅。矢沢、ムダにしないからさ。これはある意味、武器だよね。