ぬらぬら相撲 #1「二十一世紀型」

 まったく二十一世紀になったというのに何の実感もないというのはこれ、実に楽しくない。私が子供の頃に脳に描いていた二十一世紀と比して思うにこれはもう、こうして文字などを書いている時点で相当に間違っているのであって、こんなものは脳から脳へ直接伝播せんければならない。また、歩くなどといった行為も実に馬鹿馬鹿しく、これもすべての通路が機械の力で随時稼働し人間様はただ突っ立っているだけで随意に瞬時に目的地へと到達するのである。頭には硝子製の陶器のようなもの。銀のツナギ。それで、ペ、モヒャウオス、ズーヌー、シポン。シポン。などと各国共通の奇怪な言語を操るのである。脳内で。
 現実はどうか。というとこれが未だに前時代的な茶碗などというものに、どんくさい米飯をよそい喰らっているのである。超ダサい。喰う、という概念がそも前時代的であって、栄養など直接体内に液状のものを流し込むのがベリー・クールな二十一世紀スタイルというものである。そう考えると今の自分の生活スタイルというものがひどく惨めなものに感ぜられ、居ても立ってもいられず、早速私は未来式の生活スタイルを取り入れようと考えた。先ず、大昔に飼っていた出目金・らんちゅう等の住処であった金魚鉢を風呂場で丁寧に洗い、頭に被せてみた。ベリー・クール。視界が宇宙的になった私は次に銀のツナギ、これは持ち前がないので、古い作業服を銀に塗装してしまおうと考えた。金魚鉢を被ったまま、ピジャマを脱ぎジーパンをくんくんに穿き近くの工務店へ銀のペンキを買いに表へ出た。
 と、宇宙ヘルメットの中に不快な音。ボト。前をみると眼前にカラスの糞。高ぶったテンションは瞬時にしなしなになり、すぐに部屋に戻り焼酎を浴びて不貞寝しました。吽。