説明します

まず簡単なルールから説明いたしますので。
それぞれ各チーム二列、説明いたしますので。二列に並んで頂きまして、後方の列の方が棒を持、説明いたしますので。前列の皆様は相手チームの攻撃を防、説明いたします。棒を落としてし、それも説明いたしますので。
棒を落、説明いたしますので。
棒、説明いたしますので。

説明いたしますので!

棒を落としてしまった場合はその選手は反則ということになりますのですみやかにコートの外のボックスへ移、説明。しますから。今。
コートの外のボッ、だから。するから。
コ、するって。
コート。の。外。のボックスへ移動しましてこちらで待機してもらうことになりますがその際一切絶対に声を出さないで下さいそれも反則行為とみなし減点となりますからくれぐれもご注意下さい声を出さないようにくれぐれも。

では、相手チームの攻、説明するっつってんの!

メッセージ

書籍CD漫画弁当箱ペットボトル紙屑等の瓦礫に綺麗に空いた人型の空間から世界に向け私が送るのは愛のメッセージ。届きますか?ませんか?一日中自室に篭もりただ呼吸し飯を喰うだけのこんな私でも祈ることぐらいは出来るのだということを証明すべく昨日からこうして一心不乱に念じ続ける愛のメッセージは届いているのですか?いないのですか?少しく心配になり一旦祈りを止め珈琲を一口啜るが不安はいや増すばかりで。慌てて所定の人型スペースに戻り一心不乱にお届けする愛のメッセージは届きますか?ませんか?返事しろよ馬鹿。もういい。

BOCCO No.5

「どうやら座敷ぼっこが五人居るらしいな」
 夏休みが明けたばかりの教室に集まった生徒たちの、久しぶりの笑顔を眺めながら教師がつぶやいた。
「先生、座敷ぼっこってなあに?」
 真っ黒に日焼けした顔から真っ白な歯を覗かせて、活発な生徒たちの中でももっとも元気なやんちゃ坊主、座野が小首をかしげている。
「最近の子たちは知らないだろうなあ。ぼくたちが子供だった頃は、座敷ぼっこがよく現れたものだったよ」
「今この教室に、その座敷ぼっこが居るの?」
 充実した夏休みを過ごしたのか、すっかり大人びて見える敷野が不思議な様子で教室中を見回している。初日から授業を始めるものでもなし、若い彼らに昔の話をしてやるのもいいだろう、と教師は座敷ぼっこについての話を始めた。
「友達みんなで遊んでいると、いつの間にかひとり、増えているんだ。確かにいつもの顔ぶれなのだけれども、どう数えても、明らかにひとり多いんだ。でも、そこに居るみんなが、最初からいたはずなんだ。不思議だよねえ。これはね、座敷ぼっこがひとり、こっそりまぎれこんでいるからなんだ」
 額にはじっとり汗をにじませながらも、鳥肌を立て身を縮こめる生徒たち。みんな自分は初めから居たはずだ、お前が座敷ぼっこなんじゃないかと口々に騒ぎ出す。
「しかし五人も居るってのはなあ。先生も初めてだよ」
 出席簿を確認すれば、やはり人数は五人、増えている。しかし顔ぶれは一学期と変わっていない……はずだ。机や椅子の数も人数分、きっかり揃っている。きっと座敷ぼっこがこっそりと情報を操作したのだろう。教師はもう一度、ひとりひとりの生徒たちの顔をまじまじと眺めてみる。いつもと変わらぬ、かわいい生徒たちの表情だ。

  *    *    *

 少子化が続き、すっかり生徒数の少なくなったこの田舎町の分校には、全校生徒を合わせても三十人足らずの生徒しか居ない。ひと学年に対しひとクラス、どの学年も十人と居ない、小さな小さな小学校だ。改めて生徒たち七人の表情を眺めてみる。
 確かに一学期は、この三年生のクラスには二人しか居なかった。が、今は間違いなく、七人居る。違和感だけはすごくあるのだけれど、どの生徒もまぎれもなく、最初からこの学校に居た、大事な生徒たちだ。そのはずだ。

「お前があやしいやい」
「ぼくは最初っから居るよう」
「ちっちゃな頃からみんないっしょだったじゃないかあ」
「こらこら、ぼ野、つ野、こ野。やめなさい。みんな最初からいた、私のかわいい生徒たちだよ」

 ぎらぎらとした太陽は二学期になっても相変わらず強い日差しを教室の中に差し込ませており、全開にした窓からは生暖かい風が時折ふわっと入り込む。窓の外では蝉の声がじわんじわんと鳴り響いている。
「不思議ナコトモアルモンダヨネー」
「ソウダネー」
 夏休み気分が抜けきれないのか、スティーヴは眠そうな目をこすりながらぼんやりとしている。クラス一の優等生、メアリは可愛いおでこを押さえながら、この不思議な現象について考えをめぐらせているようだ。
「リチャード先生、ソノ座敷ボッコトイウノハ……」

職業

 それ用の台座に座って係員の指示を待つ間、これでも飲んでいて下さい、と渡されたコーヒーがずいぶんと薄く、しかしこんなところでコーヒーの味についてあれやこれや言うのも少し野暮なんじゃないかと思い、黙って啜った。しばらくすると、大きなポリ容器を抱えた係員が三人やってきて、碌に挨拶もしないまま作業にとりかかる。

 上の方から塗っていかないと、足許に溜まってしまいますから、といきなり顔の方から塗られたのには参った。まだ液状のそれは生温く、こそばゆい感じもするが、そんな感覚にもじき慣れた。塗り、乾いてはまた重ねて塗るという単調な作業を繰り返し、二時間も経った頃には私の体はすっかり台座に固定されていて、見た目も、気持ちも、もうだいぶ銅像のそれになってきているのが自分でも分かる。前の仕事を辞める時は、その後まさか自分が銅像をやることになるとは思いもしなかったが、今はただ、何処に運ばれ飾られるのか、それだけが気掛かりだ。

アイ・ラブ・ユー, 雪国

 ちょっとね、汽車に乗りたいって思っちゃったわけ。思いついたら即動きたいのが僕ですから。すぐ買った。特急のきっぷをパーッと買っちゃった。すぐに荷物まとめてさ、飛び乗ったの。汽車にね。気分はもうアレだよね、上京。思い出すよねやっぱ。ひとりぼっちでさ。たまにはいいよねこんな旅も。うん。
 でもさ、パーッと確かめずに買っちゃったもんだからさ。そうそうそうそう、遠いやつ一枚、なんて言って。北だとか南だとか右とか左とかさ、矢沢そういうのどうでもいいわけ。なんでもイイから遠いやつ一枚、それでOK。

 ……アレどのぐらい揺られてたんだろうね。雪。気がついたら。一面。真っ白なの。おどろくよね(笑)。パッと乗って次にパッと顔上げたら、雪国なの。トンネル、スーッと通りすぎたらさ。いや、ビューティフルの一言だったよね。こんな時に出る言葉は。やっぱ旅ってイイよね、って思ったもん。もうその景色一発でさ。最高。全っ部、ホワイト。いや、シルバー? 銀世界っていうの?
 こっちはまさか雪国に行くなんて思っちゃいないもんだからさ、うすーいパリッパリのシャツ一枚でさ。寒いわけ。当たり前だよね(笑)。そしたらさ、向こうっ側に座ってる女性がさ、窓開けて。冷たい風が一気にスーッ、とさ。入ってくるの。おどろいたよね。寒さナメちゃいけねえなって思った。そんで、こんな寒いのに何窓開けてんだろうな、と思ってさ、見てたわけ。女性のほうを、こう、ジッとさ。駅長呼んでた。向こうのほうの。イイ声してたな、あの女性。
 大体そんな時ですよ。メロディーがパッと浮かんでくるのは。寒さとさ、シルバーと、女性? このシチュエーションもらっただけでもう正解だよね。この旅。矢沢、ムダにしないからさ。これはある意味、武器だよね。

涼宮ハルヒの雪国

「……ウソだろ、おい」

 トンネルを抜けると、そこは雪国だった。
 もちろん、今は四季の中で俺がもっとも避けて通りたい、なかったことにできるのならばそれに越したことはない、うららかな春をよりいっそう満喫するためにわざわざマイナス地点からスタートさせるためだけにこの季節は存在してるんじゃないかねとすら思える、つまり、真冬だ。真冬に雪国に来れば雪が降り積もっていることなんざ、飼い猫が急に喋り出してしまうようなことがもはや日常茶飯事となった現在の俺の生活の中で起こる現象としては、ノーマルすぎてほっとひと安心できる部類のものだ。それにしても降りすぎなんじゃないか。
 溜息も白い煙となって吐き出される。何も起こらなければいいんだが。

 少しずつスピードをゆるめる汽車は、国体クラスの腕前を持つカーリング選手にあやつられるようにピタっと信号所のあるあたりで停止した。すると、通路向いの席に座った、ちょうど俺の妹とおなじぐらい、いやもっと年下だろうか、小さな女の子がやおら窓を開けた。強烈なブリザード舞い込んできて俺のただでさえ少ないヒットポイントを容赦なく減らしてゆく。少女は寒さもものともしないチビッ子特有の活発さで窓枠から身を乗り出すと、ホームの向こうにいる人影に向かって大きな声で叫びだした。

「駅長さあん。駅長さあん」

 明かりをさげてゆっくり雪を踏んでいる男はマフラーで鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れていた。しかし、少女の声はそのぶ厚い毛皮が音波を遮断しているのか、はたまたすっかり耳の遠くなったおじいさんであるのか、全く届いてない様子だ。少女はだんだんジレてきたのか、
「駅長さあん。駅長ー。ちょっと! バカ駅長!」
 こらこら、そんなぶしつけな言葉を使うもんじゃありませんよ。……まるでアイツの子供の頃を見てるみたいだ。やれやれ。美しい景色に見惚れているうちにあの忌まわしい年中暴風警報発令中のような、今は一つ向こうの四人掛け座席を占拠してグーグーいびきをかいてやがる誇り高き団長様のことはすっかり忘れかけてていたところだったのに。
「やはりあなたもお気づきですか」
 顔が近いぞ古泉。これが夏なら俺は脊髄反射のスピードでお前の顎に右カウンターを打ち込んでいただろうな。よかったな、真冬で。
「ご冗談を。それにしても、やはり変だと思いませんか。ここは明らかに、トンネルを抜ける前とは違う空間のようですよ。ここは異世界なのか、あるいは」
 またか。せっかくの冬休みなんだ、勘弁してくれ。
「あのう、ここはちょっと……あれ? そんなはずは……」
 朝比奈さんはもはやおなじみとなったうろたえ顔であたふたとしていらっしゃる。隣で石膏彫刻のようにじっとしているのはいつも通りの長門だが、珍しく眉をしかめるような表情をみせている。いったいここはどこだ。いや、ここは「いつ」の「どこ」だ。
「さっきまでとは違う時間平面」
 ……やれやれ。やっぱりただの慰安旅行では終わりそうにないってことか。
「トンネルを通過する間に、この汽車は八年の時間遡行をしている」
 三年前の次は八年前かよ。これは桃とか柿とかが関係してんのか。
「それにあの子」
 なんだ。あの元気すぎて羽根でも生えてそうな女の子か。
「そう」
 一体どうしたってんだ。たまたま乗り合わせた、ただの乗客じゃないってことか。
涼宮ハルヒの異時間同位体
 ちょっと待て、じゃあここに寝てるハルヒは一体。
「非常事態。起こしてはいけない」

小耳

ちょっと小耳に挟んだ話なんですがね。
これが困ったことに、え、この話、先週小耳に挟んだんですが、
この話が小耳にうまい具合に挟まって、取れないんですよ。
耳のこの、裏? 奥? や、小耳、ですね。小耳に。
うまいことスコーッと挟まって、取れやしない。
寝る時なんかもすごくモゾモゾして不快だし、ちょっと、ね。
挟まっちゃって困っちゃってっていう話なんですが、
話っつうか、こう、文書? 文書が耳に。文書?
まあ挟まって取れやしないもんだからそれがどんな話なのかは
私にはまだ分かんないんですけど。話? 文書? アレ?
すみません、小耳に挟まってたもんだから
勝手に話だと思い込んでましたが……
何だコレ!? なんか耳に。うわ、えーと。

ちょっと待って下さいね、ちょ、えー、
肉ですね。肉でした。肉が小耳に。これは、えー、豚肉ですか。
豚肉が小耳に挟まってました。失礼。