虚無虚無

  • yanokami「じゃあジャンボすごろくやりまーす」
  • どんぐりまなこに黒装束 ハンチングキャップに足元フラフラ
  • 一休さん「重い! 重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重いマジで重い重い重い重い重い重い重い重いって!」
  • (ここで三島由紀夫が小ぶりな茶碗を片手に登場)
  • .


   安部譲二さわり料   \280-
   小計         \280-

       ピクッ
  ーーーーー〜ーーーー〜〜`` ピクッ
   ↑
  野坂昭如がよく尻から垂らしてる紐

  • ☆☆☆グッと力を入れただけで額にpumaの柄が出る方法教えます☆☆☆
  • 【紐】野坂昭如がよく尻から垂らしてる紐を見かけたら報告するスレ【紐】
  • 「オリオリオリオー、ヤリヤリヤリヤー」とのことです。
  • 洗面器が割れるおまじない
  • 分度器燃やしちゃった的な

浩一さん・2

 もう小学生の頃からつるんでる連中なんスよ。俺等。みんなで馬鹿やってたらいつの間にかオッサンになってたっつぅか。ありえねぇスよ。もう四十二スよ? 馬鹿ばっか。みんな。

 中でもみんなの兄貴分としてしたわれてる浩一さんってのがいて。浩一さんに俺、本っ当お世話になってるんスよ。お前その歳で無職もねーだろー、つってバイト斡旋してくれるし。毎月自分の給料日にはみんな集めて、喰え、つって。バーベキュー。頭上がんないっスよ。最高。最高の兄貴。マジで。

「無駄な喧嘩はしねぇ」が口癖の浩一さんスから、俺等も喧嘩はしねぇの。馬鹿だけど。喧嘩はしねぇ。でもいざという時はやっぱ浩一さんが出るの。強ぇの。一発。大体。本当、最高。最高の男。マジで。

 でもこの間、浩一さんが飼ってた犬が死んじゃって。
 あン時の浩一さん、見てるの辛かった。マジで。あんな悲しそうな浩一さん、初めて見た。俺等ただ立ってるだけ。マジ辛かった。
 みんなで墓掘って、泣いた。
 浩一さん。みんなの憧れ。

浩一さん

俺。大体のことは浩一さんから学んだ。
浩一さん。男。心底。
俺達の周りで一番重い物持てたの、浩一さん。
一番遠くまでボール放れたの、浩一さん。
浩一さん。本当格好いい。男。
浩一さん。一回だけ、人前で泣いた。
オイオイ泣いた。浩一さん。
キッスが死んだ晩。仔犬のキッス。牡。泣いた。
みんな泣いた。
二十八人、みんな泣いた。
浩一さん。みんなの憧れ。

MUSIC

父から貰ったクラリネット片手に行くは四菱銀行
兄から貰った革ジャンパーに
姉から奪ったパンティストッキング
母の手作り弁当をかかえ

自動ドアがすぅと開き
ききすぎた空調の冷気が外へ流れ出す
俺のただならぬ雰囲気に蒼ざめる女子行員
怯える客達をよそに 俺はクラリネットを取り出し
演奏するは 日野皓正のスネイク・ヒップ

ドとレとミとファとソの音が出ない
それでも止まぬ俺の 俺の魂の音

銀行内を支配する強烈なヴァイブレーション
拍手喝采 踊り出す銀行員

これだから音楽はやめられない

或る男

世界のすべてに絶望した男。

世界のすべてに絶望した男はひとり
淀んだ川を眺めていた。
世界で一番哀しい川。悪くない。

靴を脱ぎ欄干を乗り越え
橋のへりに立ち、空を見上げる。
厚い雲が一面を覆い、太陽は見えない。
悪くない。

「うふふ」
橋の上に少女がひとり立っていた。
「うふふ。おじさん、おくつ」
「ああ、いいんだ。おじさんはもう、靴はいらない」
「うふふ」
「おかしいかい」
「うふふふ。おじさん、へん」
「そうかい。へんかい」
「うふふ。へん。へんなおじさん」

男は欄干をもう一度乗り越え
少女の頭をひとなですると
脱ぎ捨てた靴を拾い上げ、川に放った。
淀んだ川に大きな波紋がひとつ。

大きな波紋をいつまでも眺めながら
うふふと笑う少女を背に
男は元来た道を裸足で歩いた。
へんなおじさん。悪くない。
(その後の活躍はみなさんご存知ですよね?)

つい踊ってしまった者

 「こぶとりじいさん」のことはきっと誰でも知っているはずだが、そのストーリィを皆さんは憶えているだろうか。私が「こぶとりじいさん」にはじめて触れたのは、幼稚園の授業のなかで聞かされたものだったと記憶しているが、私の通っていた幼稚園では、こと音楽・美術、つまり「おうた・おえかき」に力を入れており、こぶとりじいさんも国語的な触れかたではなく、件の「人の良い、ふとった、こぶ付きのじいさん」と「性格の悪い、やせこぶじい」の二種の描き分けをメインに取り扱うという「おえかき」要素のアプローチからであった。

 余談。この幼稚園は「おうた・おえかき」にやたら力を注ぐあまり、体育に関しては相当いい加減なことになっており、跳び箱やプールなど、一応触れて馴染んでおいたほうが良いのではないかと思われるものがなく、小学校に上がった時、他の幼稚園・保育園出身の者らの体育センスに、もともとそのセンスに大幅に欠ける私はずいぶんな差を感じた。さらに余談。その幼稚園の校歌(園歌?)は

おとぎのくにからバスがくる
たのしい○×ようちえん

 という歌い出しから始まるのだが、臆面なく信じてたもんなぁ。おとぎの国からバスが来た! ハラショー! と陽気に乗り込む我々園児を乗せたバスは、到着後は敷地内の広場にいい加減に停車していたような気が今となってはするが、こどもの想像力をもってすれば傍らのバスを消すことなど容易だ、ということだったのだろう。

 余談終わり。そんなわけで私は「こぶとりじいさん」について、横に長い(太い)じいさんと、縦に細長いじいさんの二人がいた、という割とどうでも良いところばかりを重点的に見ていて、肝心のストーリィがどういうものだったのかすっかり忘れていた。そんな折、デジタルリマスターによる再放送の始まった『まんが日本昔ばなし』で「こぶとりじいさん」が放映される、とラテ欄で知った私はこのことを思い出し、あらためてストーリィに触れる絶好の機会を逃すまい、と定時で会社を飛び出し、急いで帰路についた。

 はたしてストーリィのほうは……ご存知の方も多いかも知れないが、忘れてしまっている方のためにあらためて書き出すとこうだ。昔々、ある村に人の良い、陽気なじいさんがいた。このじいさんには頬に大きなこぶがあり、そのことについて近所の童子らに小石を投げつけられるなど嫌がらせを受けたりもしたが、なにせ人の良く陽気なじいさんなので、卑屈になるでもなく比較的楽観して暮らしていた。一方、同じ村に何の因果かもう一人、頬にこぶをたくわえたじいさんがおり、こちらのじいさんは対照的にひどく陰気で、童子の嫌がらせにもマジレス。猛然と喰ってかかるタイプ。

 ある日、陽気なほうのじいさんは夕立から逃れるうちに迷いに迷い、知らない山奥にたどり着いた。あたりはすっかり暗くなり帰ることのできなくなったじいさんは近くの切り株に腰を降ろし途方に暮れていた。すっかり暗くなった頃、どこからともなく祭り囃子が聴こえてきて、わらわらと恐ろしい鬼達が集まってきた。鬼のパーティー会場だったのである。じいさんは恐怖のあまり身を潜めて震えていたのだが、時間が経つにつれ生来の陽気な性格が顔を出し、気がつけばついフラフラと、祭り囃子のリズムに反応し踊り出てしまった。驚いたのは鬼のほうで、突然、人間が秘密のパーティー会場に乱入してきたことに、本来ならば怒りのあまり喰ってしまうところだが、にしてもこの陽気かつ素敵なダンスステップはどうだ。気がつけばじいさんはダンスフロアの中心で喝采を浴びており、宴もたけなわ、朝日を浴びる頃ようやく我に返ったじいさんが逃げ出そう(遅いよ)とすると、すっかりじいさんのことが気に入った鬼の長はひとこと、「おめ、明日も来いや。担保としてこの、頬にくっついた妙なやつを預かっておく」と言い、こぶを千切り取ってしまった。一目散で逃げ出したじいさんは途中で気がついた。こぶがなくなっとる! やったやったと小踊りしながら村へ帰っていった。

 その話を聞いた陰気なほうのこぶじいさんは次の晩さっそく、陽気な元こぶじいさんに教わった通りの道を行き夜が更けるのを待った。はたして鬼達は集まってきて、ダンスパーティーが始まった。しかしそもそも陰気なこのじいさんが上手くダンスを踊れるわけもなく、度胸もないのでなかなか鬼の輪の中に飛び出すことができない。やがて思い切って飛び出したは良いが、見事なリズム音痴ぶりに鬼達のテンションは否応なく下がり、パーティーは中断。鬼の長に呼び出されるじいさん。「おめ、昨日の奴と違うな。何かムカツクのでこのよく分からない塊はお前に、ホラ」と元こぶじいさんに付いていたこぶまでくっつけられてダブルこぶになり、泣きながら帰ったと。

 陽気なバカが少し得をした。このひどく示唆的なストーリィに、この歳できちんと触れることができた巡り合わせを嬉しく思い、つい長々と書いた。